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機械装置、医薬品添加剤、食品添加剤、食品品質保持剤
- フロイント産業株式会社
- 世界で最も均一で美しいコーティングを可能にした技術
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海外渡航中やむを得ず、海外の薬を口にしたとき、
またドラッグストアに並ぶ薬を目にしたとき、実感したことはないだろうか?
筆者がアメリカで目にしたのは、色ムラがあったり、
サイズが大きすぎたり、表面がザラザラ、デコボコしていたり…という薬の数々。
それに比べて日本の薬はどうだろう?色が均一で滑らか。
まったくムラがない。まるで芸術品のように美しいのである!
実は日本には、薬の表面をコーティングする世界最高水準の技術を誇る企業がある。
それが、フロイント産業。
同社が1964年にその原型を開発した コーティング機械装置「ハイコーター」は 今や世界の製薬業界で、 薬をコーティングする機械の代名詞となっている ほどである。
ここでちょっと、薬のコーティングの仕組みについて学んでみたい。
「通常私たちが飲む薬の表面は、苦みや臭いを包み隠したり、薬を紫外線や湿気から保護したりするための膜で包まれています。その膜を施すのが、弊社が開発した機械装置『ハイコーター』。薬以外にもガムやチョコレートの表面への糖衣(シュガーコーティング)などにも使用されています」(フロイント産業 鵜野澤さん)
また錠剤には、飲み込みやすいように、または、胃を通過して、腸のなかで溶けるといった機能を持たせるために、
糖衣よりも薄い「フィルムコーティング」という膜が施されることがある。
その薄さは何と0.1ミリ以下、数10〜100ミクロンの高分子の膜になるのだとか。
まさに、肉眼では確認できないほどの、緻密な膜で覆われているのである。
この装置、1回で数百kg〜数トンもの原料をコーティングできるが、一体どのような過程を経て完成するのだろうか?
写真を見るとズバリ、
衣類用の乾燥機にスプレーガンが組み込まれたようなイメージだが…。
1:コーティングドラムと呼ばれる大きな容器が回転。
↓
2:このなかに、コーティングする対象物(薬やガムなどの核部分)の原料を投入。
↓
3:スプレーガンから、コーティングする液を吹き付ける。
↓
4:同時に熱風を吹き付けて、表面を乾燥させて、膜を形成する。
ここで注目すべきは、3、4。
噴霧(スプレー:加湿)をしながら乾燥させるという、
ある意味矛盾
したこの工程では、非常に難しい技術
が必要とされるのである。
また、錠剤1錠の表面積だけを見ると小さいものだが、
錠剤が1度に製造されるのは、何十万〜何百万錠!
これだけの大きな表面積に、正確に、
均一にコーティングするためのノウハウとは一体…?
装置の内部で
● 原料を素早く撹拌混合する技術
● コーティングする液体を幅広く均等に吹き付けるノウハウ
● 吹き付けた液を素早く乾燥させる機構
など、それぞれの要素技術が相乗的に作用することで初めて、 素早く均一に被膜形成することが可能になっているのだとか。
「日本薬局方では、含量均一性という基準が定められていて、
薬一粒一粒で、
品質が異なるようなことがあってはいけません。
もちろん『ハイコーター』ならば、そうした基準もしっかりクリアできます」
また、日本の薬ユーザーの目は、とても厳しいという。
「ちょっとした色や形の違いに敏感で、少しでもいつもと違うと感じられたら、
返品という事態になってしまいます。それだけ厳しい患者さんの目がありますので、
私たちもその期待に応えて行かなくてはいけないと思っています」
「近年、薬の製造現場には、女性のオペレーターさんもが急増しています。 そのことから、工業機械であっても、ユニバーサルデザインという概念に着目。 部品が重くならないよう、 高所作業をしなくても済むようにするなど、使いやすさを最大限に考慮しました」
また、最近では高薬理活性物質といって、 薬の成分がごく微量でも効果が大きいものが増えてきている。 そのため、オペレーターの方々が薬効成分を吸い込まないよう、 安全性を確保できる機能を備えた機器もあるのだとか。
ほかにも、「ハイコーター」には、スタイリッシュなデザイン、 機器のクリーニングのしやすさなど、きめ細かいこだわりが凝縮されている。
そして今後は環境にも配慮し、機器の省エネ化を進めて行くことを目標としている。
フロイント産業の設立は1964年。東京オリンピック開催の年。
その数年前、のちの創業者となる伏島靖豊氏はある製薬会社の工場見学に行き、その作業環境に驚愕した。
「現在、錠剤をコーティングする装置は密閉されているのですが、当時は外部にむき出しの状態。
そこに職人の方々がバーナーで温められた装置を用いて、錠剤をコーティングしていたといいます」
そこで伏島氏はひらめいた。
「これから、高度経済成長と共に薬の時代が来るのは確実である」
「もっと効率よく生産できないか?」
「しかも、もっと作業環境を改良できないか?」
「それを実現する機械を自分で作るしかない!」
そして友人と共にアイデアを出し合って開発に取り組み、 コーティング装置「ハイコーター」の前身となる 第1号機が完成したという。
だが実はその記念すべき1号機の写真がない…。それはなぜか?
「1号機が完成すると、早速車に積み込み、一軒一軒製薬会社にデモに回ったといいます。そして幸い、1号機はすぐに売れてしまった。
会社をスタートしたばかりで、1号機が売れるか売れないかは重大な問題でしたから。写真を撮る暇もなかったのですね」
その後2号機以降も売れ続け、国内のみならず欧米でも販売されるように。
工業製品としては珍しく、累計1300台も売れるベストセラー商品となった。
さらに、同社の面白いところは、設立当初から錠剤のコーティングに使用する液体も開発し、販売をしているところ。
ここに同社の成功の秘訣が隠されているようだが、それは一体…?
次のぺージで探ってみよう。