〜さらなる進化を続ける 人と地球に優しい赤いクレーン〜
古河機械金属グループ/古河ユニック株式会社
建設・土木現場や高所作業現場のほか物流を中心に、
あらゆる場所で見かける赤いクレーンの「UNIC(ユニック)」。1台で「吊る・積む・運ぶ・作業する」ことができるトラック搭載型クレーンだ。
同社は同製品において国内約50%のシェアを誇る。今や日本の産業界に欠くことができない同社クレーンのこだわりに迫る。
「こちらは、トラック搭載型クレーンといって、荷物の運搬と積み下ろし作業を1台のトラックで効率良く行うことができるものです。建築資材のみならず、高額な重機や墓石なども、荷物に衝撃を与えることなく、安全に下ろすことができます」(古河ユニック株式会社 佐倉工場長)
「ないものは自分たちで創る」
このトラック搭載型クレーンを開発したのは古河ユニック株式会社(当時、共栄開発株式会社)。同社は昭和21年(1946年)の創業以来、農林省の指定を受け、農地開拓や災害復旧工事など、日本の戦後復興の一端を担っていた。
昭和20年代後半、日本での荷役作業が人の手から機械へとシフトしていくなか、昭和34年(1959年)にヨーロッパ視察に出向いた経営陣は、荷物の積み下ろしと運搬を同時に行うトラック搭載型クレーンを目にする。日本においてその必要性を痛感した彼らは、帰国後すぐに独自開発をスタートさせる。
「日本ではただ重いものを吊って下ろすだけのクレーンは通用しない」
「スーッと動き出して静かに止まる操作性を追求しよう」
との目標を定め、試作を繰り返す。
そしてついに昭和36年(1961年)、
日本初のトラック搭載型クレーン「UNIC100」
を開発したのであった。
顧客のニーズに応じたカスタマイズも
昭和36年といえば、昭和39年(1964年)の新幹線開通、東京オリンピック開催に向けて日本中が建設ラッシュを迎えていた時代。「UNIC100」は多くの現場で活躍することとなった。
また当時より、顧客のきめ細かなニーズに応えるのも同社のモットー。地元自治体から「ごみ収集に使用できないか」という要望があれば、「UNIC100-塵芥収集車」を開発、また市場(いちば)関係者に、「市場を走る超小型運搬車にクレーンを付けてほしい」という要請を受け、小型の構内運搬車架装クレーンを誕生させたこともあった。
ベストセラー機は大阪万博でも大活躍
高度経済成長真っただ中の昭和42年(1967年)、それまでの技術力を集結した全油圧式の中型トラック搭載型クレーン「U-200RA」が誕生する。
昭和45年(1970年)の大阪万博では同機をカスタマイズした「U-200R架装・塵芥収集車」が大活躍。
ユニックの名は広く世間に知られ、トラック搭載型クレーンの代名詞といえば「ユニック」と言われるようになっていった。
さらに、同機の改良を進め、昭和46年(1971年)に「U-200RB」を開発。その後「U-200Rシリーズ」は、13年間にも及ぶロングセラーとなった。
より高く、より使いやすく! 業界内で性能競争の激化
その後、トラックや乗用車と同様にクレーンにもパワーアップの要望が強まり、さらに昭和55年(1980年)頃からは、操作の簡易化、そして、荷物をより高く、より遠いところに運ぶという性能競争が激化していく。
開発当初のブームは2段であったが、
よりクレーンの長尺・多段ブーム化が求められていった。
「軽くなったか?」を合言葉に、重量との闘いが続く
しかし、ここで大きな課題となったのが、クレーンの長尺・多段ブーム化に伴うクレーン重量の増加だ。しかも、ユーザーのニーズは多段ブームを手動ではなく自動で伸ばすことだった。
「クレーンの長尺・多段ブーム化はクレーン重量の増加をもたらし、さらに自動化するにはそのための機構を追加する必要があることから、逆にトラックの積載量を減らしてしまう結果となりました。当然ながらトラック搭載型クレーンにおける積載量確保は至上命題であり、クレーンの軽量化は大きな課題となりました」
これを解決すべく開発設計チームでは
「軽くなったか?」を合言葉に日夜研究を進め、多くの新機構の開発に着手。
机上の計算と加工を繰り返し、昭和54年(1979年)、ついに全自動伸縮3段ブームを開発、昭和58年(1983年)には全自動伸縮4段ブームの「UR-30VAシリーズ」を誕生させる。
その後、昭和62年(1987年)には6段ブームまで登場し、ニーズに応えて続けていった。
現在では平成21年(2009年)に開発した7段ブームが最高揚程を誇り、地上20m近くでの作業を可能としている。
ラジコン開発は玩具のラジコン飛行機をヒントに
昭和60年代、日本はバブル期を迎え人手が足りなくなっていく。そこでクレーン作業においても省力化が求められていった。
従来作業は、クレーンを操作するオペレーターと玉掛け作業(フックに荷物を掛ける作業)を担当する係の2名で行っていた。これを「1名で行えないか?」というニーズに応えるべく、同社では、玩具のラジコン飛行機をヒントにラジコン操作の研究を進め、昭和60年(1985年)には業界初の無線式遠隔操作装置であるワンハンド型ラジコン「RC-30R」を開発。
これにより作業者1名でも簡単なラジコン操作で荷物の上げ下ろしを行えるようになった。
その後、21世紀を迎えるとコンピュータを用いた機械制御が当たり前になり、トラック搭載型クレーンにおいても付加価値を求める声が大きくなる。
同社は、平成14年(2002年)にパソコンのマウスの
ダブルクリック
をヒントに加減速切替を可能にしたワンハンド型連動ラジコン「RC-500」を、平成19年(2007年)には
ゲーム機のコントローラーをヒントに直感的な操作を可能にしたジョイスティック式連動ラジコン「RC-500HJ」を開発するなど、
新しい技術を次々にユニックに取り入れ、常に業界をリードしていく。
時代はエコへ、省エネクレーンの開発に着手
平成10年以降は、地球環境問題、排気ガス規制、原油高騰などで車業界でも
省エネが叫ばれるようになった時代。
そこで同社は、省エネモデルの開発に乗り出す。
「トラック搭載型クレーンは、トラックのエンジンを動力源に油圧で駆動しています。つまりエンジンに直結した油圧ポンプを回すことで油を循環させてクレーンを動かすのです。そのためクレーンの動作スピードを上げたい場合、まずエンジンの回転数を上げて、油圧ポンプを回して、よりたくさんの油を吐出することが必要となります。しかし、エンジン回転数を上げるとそれだけ燃料消費量は増えますし、動作音も大きくなることになります」(古河ユニック技術開発担当)
「とにかく、エンジン回転数を減らしたい…」
そのため、これまでトラック1台につき
1つの油圧ポンプでクレーン制御していたのを、2つのポンプで制御する
というアイデア「エコポンプシステム」を考案する。
「エンジン回転数が低く、駆動力が小さいときは1個目のポンプの油を使い、エンジン回転が徐々に上がってきたら2個目のポンプの油も使うようにします。そうすると、エンジン回転数を従来機ほど上げなくてもポンプの油は倍増し、クレーンが早く動くようになります。こうやってエンジン回転数を節約する仕組みです」
そして、平成18年(2006年)、この「エコポンプシステム」を採用した低燃費・低騒音クレーン「U-can ECO」を開発。
この画期的な省エネクレーン
は、中型トラック架装用クレーンの従来機と比べ、
エンジン回転数は約47%減、燃料消費量は約40%減、
CO2排出量は約40%減と大幅な省エネを可能にした。
業界初! 低燃費・低騒音クレーン「U-can ECO」が省エネ大賞を受賞
これらの成果が認められ、
「U-can ECO」は、経済産業省主催の平成19年度省エネ大賞「省エネルギーセンター会長賞」を受賞。
従来この賞を受賞する製品は、洗濯機、エアコンなどの家電製品が主であったが、
クレーン業界初の受賞という栄誉となった。
電動式クレーン「U-can ECO-EV」でCO2排出量ゼロに
近年EV(電気自動車)が注目を集めるなか、同社は「U-can ECO」にクレーン作動用のバッテリーと新開発の電動ユニットを搭載した電動式クレーン「U-can ECO-EV」を平成22年(2010年)に完成。
エンジンを止めたままでクレーン操作が行え、
CO2排出量ゼロをついに実現させた。
同モデルは一般家庭用コンセントAC100Vで手軽に充電でき、8時間の充電で1時間のクレーン作業が可能。エンジン駆動に切替もできる。
「バッテリー駆動もエンジン駆動も両方可能なので、万が一バッテリー残量がなくなってしまっても安心です。また作業に応じて、エコモード、標準モード、などを選び電力消費をセーブできますし、電源の自動OFF機能なども付いています」
環境への取り組みが厳しく問われている時代。これからはクレーンも電気で動く時代なのかもしれない。
不可能を可能にする内製化率の高さ
日本で初めてトラック搭載型クレーンを生み出してから50年。
常に技術開発に努め「業界初」を多く生み出してきた同社。その高度な開発力の秘密はどこにあるのだろうか?
「それは、内製化率の高さです。例えば、バルブやモーター減速機などはユニック専用のものを自社内で設計して、自社工場内で造っています。そのため、お客様の細かい要望に対しても、開発設計チームが部品の設計から担当し、臨機応変に対応できますし、結果的にそのことが技術の発展にもつながっています」(佐倉工場長)
人より先に考えて、人より先にやらないと意味がない
また、現場は常に、「いかに最先端の情報を収集するか?」と緊張感の絶えない雰囲気だという。
「役員からも顔を合わせるたびに『軽くなったか?新しいものできたか?特許取ったか?』とはっぱをかけられています(笑)」(佐倉工場長)
そんななか同社では、トラック搭載型クレーンの基本性能の充実と同時にさまざまなタイプの製品も生み出している。
[オーシャンクレーン]
船舶で使用するクレーン。
防サビ処理を施し、波の揺れに耐えられるように強度もアップ。
漁業用の網を引く際、貨物船の資材を引き上げる際、まぐろの養殖場でまぐろを吊り上げる際などに使用されている。
[ミニ・クローラクレーン]
自走式クレーン。
屋内現場、不整地など、トラックが入れない場所にスムーズに進入。
現場を選ばず、どこでも安定したクレーン能力を発揮。海外でも活躍の場を広げ、2012年ロンドンオリンピックへ向けての建設工事現場でも多く使用されている。
そのほかにも、国内シェア約45%を誇る「ユニックキャリア」など、多彩なラインナップを用意している。
日本の「赤いクレーン」から世界の「赤いクレーン」へ
「UNIC(ユニック)」という名称には、クレーンの姿が、伝説の一角獣「ユニコーン」に似ていることと、ユニバーサルクレーンという言葉をかけて、「世界のすべての人々の役に立ちたい」という2つの意味が込められている。
その名の通り、現在ユニックは、アジア、欧米など海外へ活躍の場を広げている。
日本の「赤いクレーン」から世界の「赤いクレーン」へ、力強く勇敢なユニコーンのように、世界の人々を魅了し、さまざまな現場で多くの人々の役に立てるよう、同社のチャレンジは続く。
※「UNIC」「ユニック」は古河機械金属株式会社の登録商標です。