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2018年2月、「ザ・キッチンカンパニー」を掲げる住設機器大手のクリナップは、フラッグシップモデルの高級ステンレスシステムキッチン「S.S.」をリニューアルし、新たに最上級システムキッチン「CENTRO(セントロ)」を市場に投入した。
機能にもフォルムにも一切の妥協のない、キッチンに要求される「核心」を突き詰めた技術の結晶とも位置付けられる「CENTRO」。そのバリエーションの中に、本格調理にこだわる人のためにデザイン、作業性、清掃性のすべてを兼ね備えた究極のシンク「クラフツマンデッキシンク」がある。
広々としたスペースで、自由な調理スタイルを提案するのが「クラフツマンデッキシンク」のコンセプトで、デッキ機能、流レール機能、美コート加工といった特徴を持つ。
デッキ機能でまず特筆されるのが、作業スペースを2倍に拡げられる「大型サポートプレート」だ。
自由に動かせるサポートプレートを使うことで、シンク上まで広がる2倍の作業スペースを確保可能。1段下がったデッキ部は、水でサッと洗い流して、いつも清潔に保てる。
また、デッキ部はシンクの補助スペースとして活用できるので、洗い物も余裕を持って行える。大容量のシンクは、深い鍋や大きなフライパンもラクラク置けるスペースを持っている。
もう1つ、楽な姿勢で作業ができるこだわり設計も大きな特色だ。1段低くなったデッキ部は、力が要るパン生地づくりなどの作業で、楽な姿勢を保てるように設計されている。シンク全体が扉面よりせり出しているので、体重をかけやすく、長時間の立ち仕事も楽にこなせる。
流レール機能では、調理中にまな板やボールを洗う水流で、シンク内のゴミを自然に流すことができるほか、シンクの開口が90cmと非常に大きいので、フライパンや鍋を仮置きして洗い分けることが可能だ。
さらに、デッキシンク全体はもちろん、排水口部分まで美コート加工を施したことで、汚れが非常に落ちやすくなった。美コート加工はシンク表面をキズからもしっかりガードし、シンクのすみずみまで美しい状態を保持する。
「本格調理にこだわる人のためにデザイン、作業性、清掃性のすべてを兼ね備えた究極のシンク」という、「クラフツマンデッキシンク」のコンセプトは、「S.S.クラフツマンワークトップ」の商品開発とものづくりの方針をを継承発展させたものだ。その「S.S.クラフツマンワークトップ」の商品開発とものづくりは、どのようにしてなされたのかを紹介しよう。
当時、試作を手がけたのは、クリナップ100%出資の子会社である調理機工業(福島県いわき市/東日本大震災で被災)である。同社久ノ浜工場の工場長を勤めていた山田雅二氏(現・クリナップ(株)取締役専務執行役員 開発全部門、生産全部門管掌)は、「(久ノ浜工場は)当時、手作業による板金作業の技術が残っていた唯一の工場です。難しい仕事でしたが、(この試作に)工場の技術を活かしたいという思いがありました」と語る。
量産段階では、「S.S.クラフツマンワークトップ」の生産はクリナップの湯本工場(同いわき市)で行われていたが、商品開発サイドが提示した、従来のキッチンの常識を覆す斬新なデザインは、生産部門にとっても大きなチャレンジだった。
たとえばシンク開口部に、キッチンの前に立つユーザーに向かってせり出してくるR(曲線)部がある。中華鍋などの大きな調理器具でも余裕を持って洗えるスペースを確保するために設けられたものだ。ところが、その張り出し部にあるS字状の箇所(写真下)をどう加工するかが問題になった。単純なRならまだしも、S字状にカーブした部分をプレスで深く絞ることはできない。そこで写真のような部材を作り、溶接、研磨で仕上げるという方法を採った。
ひとくちに「ものづくり」といっても、製品のコンセプトを作り出すことと、実際の製品を作り上げることは、必ずしも一枚岩とはいかないことがある。機能上、デザイン上の必要性からたどりついた形状が、生産部門に大きなブレークスルーを要求するものになることが少なくないのだ。
これは「CENTROクラフツマンデッキシンク」にも引き継がれていることだが、「S.S.クラフツマンワークトップ」の場合、ステンレス特有の美観を活かしたデザイン表現を行うために、意図的にR(半径)を小さくした設計が行われている。つまり、緩やかな丸みではなく、厳しいカーブを描くような箇所が多いのだ。下記写真に示したキッチンのコーナー部もまさしくそうであり、それゆえ汎用品のようにプレスで絞って成型することが難しい。
ステンレス鋼は外観が美しく錆びにくいという長所を持つ一方、プレスで絞り加工を行ったあとに割れが発生しやすいなどの特性があるからだ。写真(下記左)の溶接のラインを見れば、同社の製造現場ではコーナー部分の板材をどのように折り合わせ、どんな形状のピースを作り、溶接作業を行っているかがおおまかにわかるだろう。
記事:加賀谷 貢樹