会社概要
会社名 | 株式会社杉浦研究所 |
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住所 | 本社・総務部・開発部・特機営業部 〒158-0094 東京都世田谷区玉川4−5−4 |
電話 | 03-3700-4405 |
FAX | 03-3700-4407 |
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医用光学機器といわれても一般人にはぴんとこないであろう。
だが、病理(生理)解剖・診断なる言葉を聞けばいくらかは身近に感じるのではないだろうか。
私たちが定期的に行っている健康診断で異常が見つかった場合。
あるいは体調が悪くなったときに病院で行う検査。
その際、その大小はあるが私たちの生体の一部を摂取し、専門の機関で検査をすることがある。とくに高齢者であれば多くの人に発見される腫瘍(ポリープ)。その腫瘍が悪性か良性かの判断の際にはよく聞く言葉であるが、この検査を行っているのが病理医である。
(株)杉浦研究所ではこのような病理医が生体の検査をする際に必要な顕微鏡や光学機器を開発・生産・販売している。現在主力なっている製品は「SL」という会社の略記をロゴマークとした自社ブランド製品だ。その他、光学大手メーカーからの依頼によるOEM製品。
また、アカデミックな機関からの依頼により製作する完全一点モノまでと、現在同社では大きく3つの柱を軸として光学機器の開発・製作を行っている。
「病理医のドラマ撮影の際に当社の製品を使いたいとの依頼があったんですよ」と、同社社長である杉浦静夫氏が言うように、業界内における同社のネームバリューは大きい。中でも発売以来30年以上に渡り支持されているという「MPS-7」なる製品では、撮影した臓器の画像がまるで宙に浮かんでいるかのような生々しい立体映像を見せる。
また、医用分野以外でも同社の技術は応用されている。
指紋ならぬ“足紋”とでもいうのであろうか、地面を踏んだ靴底の跡を鮮明に写し出すような機械が同機械の応用版として開発・販売されており、各種調査機関で好評を得ているということであった。
「仕事は楽しくなければ意味がありませんから」
社長は取材中に何ども「楽しい」「好き」という言葉を続けた。
そのわけは、同社がこれまで歩んできたニッチなモノづくり道を知るとわかる。
同社が設立したのは2958年。
現社長の父である杉浦睦夫氏が創業した。
「あくまで前会社に勤めていたときのことなので今の当社とは関係がありません」
と現社長は説明するが、睦夫氏は高千穂製作所(現オリンパス)で胃カメラの開発に携わった人物であり、胃カメラの開発者として業界内ではかなり有名な人物。
そんな睦夫氏が今の世でいうところのベンチャー魂であろう「金にならなくても研究者の依頼に応えたモノづくりがしたい」そんな思いから興したのが同社なのである。
同社では創業以来一貫して採算ベースに合わないという理由で大手光学機器メーカーが製作をしない一点モノの光学機器をつくり続けてきた。
「当社の製品というのは何千個も売れるモノではありませんので儲かりはしません(苦笑)。
ですが、研究者の“見たい”という要望に応えるために私たちは電気屋から機械屋、
あるいはカメラのプロまでが集まりあれこれとアイデアを出し合い新しい顕微鏡を設計・製作していくのです。
その作業工程が私は楽しくてしょうがないのですよ」
にっこりとメガネの奥に笑った瞳をみせる社長だが、同社は現在従業員数が40名。
“好き”だけでは食べていけない現実があるとも社長は続ける。
「一点モノの製作というのは新しい技術が必ず必要になってきます。
その新しい技術を使って自社ブランド製品を企画・製作するのです」
まず、アカデミックな機関から「こんな顕微鏡が欲しい」との製作依頼がある。
現在ある顕微鏡ではその要求が満たせないときに新製品の開発に移るわけだが、この時点ではあくまで一点モノの製作である。一点モノの製品を作って終わりということでは事業として採算が合わないということで、同社は新しい顕微鏡を製作する際に使うノウハウを活かして汎用品を製作していく。
そして、その製品を自社ブランド製品として売り出すことでこれまで生き延びてきたというのである。
グーグルも注目!?
今後は新分野での活躍に期待
医学用の光学機器開発メーカーとしてこれまで歩んできた同社だが
「客のニーズに応える」というブレない指針のもとにこれまで積み上げてきた経験と技術が今、インターネットが急激に普及し、世の中のあらゆるモノが「アナログ→デジタル」に変わっている社会において注目されている。
中でも今後業界から注目され爆発的なヒット商品となる予感を感じたのが
「書籍撮影装置(ブックスキャナー)」なる製品。
「まだ正式な名もない開発段階途中の製品ですから」
と社長は謙遜するが、同製品の役割を聞いて筆者は驚きの声をあげた。
「それって、グーグルが今まさに必死になって行っている事業そのものではないですか!」と。
同製品の役割は一般的なブック(書籍)をデジタルカメラで撮影し、デジタルデータとして保管する。
デジタルアーカイブ制作を考えている企業からの依頼で開発したということであったが、デジタルアーカイブを考えている企業は世の中にごまんといるはず。
また、この考えは世界中の図書館にある書籍をネット上で閲覧可能にしようと現在躍起になっている超巨大インターネットサービス企業グーグルが展開している『Googleブックス』そのものであるからだ。
一点モノの光学機器の開発・製作にこだわり続け技術を磨き上げてきた同社だからこそ、今回のような話が舞い込んだのである。
世の中がデジタルへ移行しようとも、現場でモノをつくる技術者の魂は変わらない。そんなことを、今回の取材通じて感じた。