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クリナップの主力システムキッチン「クリンレディ」に2015年5月から標準搭載された「流レールシンク」が、根強い人気を呼んでいる。「調理や洗い作業の水だけでゴミが気持ちよく流れる」と女性に評判だ。従来はシンク中央に設けていた排水口をキッチンの作業台側に寄せてゴミの広がりをおさえ、シンク底面を手前に傾けることで、ゴミが「水路」に集まってスムーズに流れるといった工夫が凝らされている。
「流レールシンク」の開発の現場には、こんな「こだわりのストーリー」があった。
商品開発は、クリナップ開発部門の伝統である写真を使った行動観察から始まった。同社の看板商品である「クリンレディ」に新たな魅力と付加価値を設けるために試行錯誤を重ねてきた開発チームは、社員たちが自宅で撮ってきた調理中や食器洗い、後片付けの写真を見ながら議論を進めていくなかで、さまざまな場面でシンクにゴミが残っていることに気づいた。2013年春のことである。
「ところが、その当時は『ゴミが残っているね』というレベルの認識で、開発チームでもそれほど重要視していなかったのです」と、「流レールシンク」開発を統括するテーマリーダーを務めたクリナップ開発1部キッチン開発課の小堀淳司氏は話す。
どこか心の中に引っかかるものを感じていた小堀氏は、しばらくあとに開かれた主婦モニター会議で「皆さんはシンクに残ったゴミをどう処理していますか?」と主婦モニターたちに尋ねた。すると主婦モニターの大半が、シャワーのついた水栓でゴミを流したり、ゴム手袋をつけてシンクのゴミを掃除していたことがわかった。
「掃除が面倒くさい」、「ゴム手袋をしていても気持ちが悪い」、「嫌だけれど仕方がない」と答える主婦モニターたちの言葉や表情の中に、まだ顕在化していない根強いニーズを感じ取った小堀氏は、「水栓の水の力だけでゴミが流れる、掃除のしやすいシンク」というテーマで企画をまとめ、社内プレゼンを行った。システムキッチンメーカーとして、ユーザーもまだ、それが不満だということに気づいていない「非満」を解消することを目指した、「流レールシンク」の商品開発は、こうしてスタートを切った。
「流レールシンク」の商品企画のテーマリーダーを務めたクリナップ開発1部キッチン開発課の小堀淳司氏(写真左)と、製品デザインを担当したデザイン課の間辺慎一郎氏
2015年5月から「流レールシンク」を標準装備し販売を開始した、ステンレスキャビネットキッチン「クリンレディ」
従来はシンク中央にあった排水口をキッチンの作業台側に寄せてゴミの広がりをおさえたほか、シンク底面を手前に傾け、「水路」も設けて、調理や洗い作業の水だけでゴミがスムーズに流れるようにした
それから開発チームは、アイディアを商品として実現させるため、実験と検証に明け暮れた。製品デザインを含め、その中心的な役割を担ったのが同社デザイン課の間辺慎一郎氏だ。「ゴミをスムーズに流すために、シンクの形状を1から考え直しました」と間辺氏は語る。試行錯誤の末、掃除がしやすく、水栓から出る水の力だけでゴミがスムーズに流れるように、従来はシンク中央にあった排水口をキッチンの作業台側に寄せ、シンク底面を手前に傾けて「水路」を設けるという、従来のシンクにはない斬新なデザインを描いた。これなら、調理台から出るゴミがシンクに広く散らばらず、水栓から出てくる水の力だけでゴミが手前の「水路」に押し出され、排水口までスムーズに流れていく。
ところが、理論やアイディアを現実の形にするのは難しい。間辺氏はシンクのモデルを作り、シンク底面に見立てた板の角度を何度も変えながら、シンク底面を手前に何度傾けたらいいのかを検証する作業などを繰り返した。水とゴミの通り道である「水路」も、溝の幅や深さをどれだけ取ったらいいのか、試行錯誤の日々が続いた。
ステンレスシンクはステンレス板をプレスして作られる。金型を作り、ステンレス板をセットして、上下から大きな圧力をかけてシンクの形に絞っていくのだ。そのため、開発部門で商品のコンセプトや形状をある程度固めたあと、金型を含めて、製品をどう作っていくのかという加工条件を製造部門と詰めていく作業がある。 そのやり取りの中でも、試行錯誤が繰り返された。
「流レールシンク」の断面。長期間の使用に耐えるよう、排水口も溶接せずに、ステンレス材1枚から絞り込んでいるのが同社のこだわりだ
「最初に(『流レールシンク』の)デザインを見たとき、これはかなり厳しい加工条件になるのではないかと思いました」と、福島県いわき市にあるクリナップ湯本工場第一製造課の吉田潤一ライン長は語る。
当初、製造部門が頭を抱えたのもうなずける。1枚のステンレス板を深いシンクの形に絞ったあと、ただでさえ板が割れやすく切れやすいシンクの角に寄せた排水口を、さらに絞り込んでいくのだ。排水口を別途プレスして作ったあと、シンクに溶接するのが業界標準だが、排水口も1枚の板から「一体物(一体成形)」で作ることに、クリナップはこだわっているのだ。
「ところがあまりにも形状が複雑で、コンピューターシミュレーションで『この製品はプレスで製作できません』という結果が出てしまいました」と間辺氏は当時を振り返る。
だが、そこで立ち止まることは許されない。間辺氏は湯本工場に通い詰め、製造部門からみて「作りやすい形」と開発部門からみて「ゴミが流れやすい形」を互いにぶつけ合い、譲れる部分と譲れない部分を明らかにしながら調整を重ねていった。その打ち合わせの結果を本社に持ち帰り、間辺氏はシンクのモデルの形状を変え、ゴミの流れの分析・検証を行う作業を繰り返した。こうした打ち合わせと分析・検証の積み重ねの中で、ようやくシンクの形状が定まったのである。
早速、その形状をもとに試作用の金型を作り、ステンレス板を実際にプレスして「流レールシンク」の最終試作品を製作した。主婦モニターを招き、最終試作品を使って調理から後片付けまでを行い、意見を聞く「現場検証」では、「ゴミが流れるのが面白い」とか「気持ちいい」と高い評価を得た。
そして、試作が終了し量産に向けての準備作業が始まったが、大量生産には試作とは異なる難しさがある。1回目のプレスで問題なく作れたのに、まったく同じ条件で作業しても2回目に失敗するということが起こるのだ。これでは仮に3回目で成功したとしても量産はとても難しい。そこで湯本工場では、気温や湿度を始め、さまざまな条件で起こる微妙な影響を考慮し、約1年間でじつに5000回もの試作・検証を繰り返した。その努力が実り、「流レールシンク」はようやく量産開始のスタートラインに立ったのである。
クリナップ湯本工場(福島県いわき市)
第一製造課の吉田潤一ライン長
システムキッチンの主力生産拠点である湯本工場の
プレスライン
製品受注開始の2カ月前となる2015年3月、「流レールシンク」は、東京都内で開催された住設機器の大型展示会で華々しくデビューを飾った。同社ブースで行われたデモンストレーションで、シンクのゴミが気持ちよく流れる様子に、来場者の目は釘付けになった。ある年配女性が「よくこんな細かいところまで気がついたわね」と笑顔で語り、デモンストレーションを行っていた小堀氏の肩をポンと叩いた。
「製造部門との打ち合わせの中で、『これではシンクの形状を変えなければ駄目だ』とあきらめかけたとき、『そんなことで形状を変えていいのか』とか『本当に作りたい形はどうなのか』と声をかけていただいたこともあります。製造部門の皆さんは『そんなものは作れない』と口では話していながらも、『やめよう』とはけっしていわずに『そういう形にするにはどうしたらいいのか』という方向で真剣に検討してくれたので、製品を最終的に形にすることができたと思います」と間辺氏はいう。
クリナップの製造部門には「市場のニーズがあれば、どんどん提案してもらいたい。それを必ず形にするのが工場の役目だ」(『デザイン思考のつくりかた』、日経BP社)という信条がある。
「どんなものでも作ります、持ってきて下さい。必ず形にします。開発部門からの提案を待つだけではなく、工場側からも技術や工法を含めてフィードバックを行いながら、新製品の開発に携わっていきたいですね。実際に製品ができてみての感想ですが、ゴミがきれいに流れていく様子を見ているだけでも楽しくなります。私たちが品質を保証しますので、ぜひ多くの方に使っていただきたいと思います」(吉田ライン長)
記事:加賀谷 貢樹
会社名 | クリナップ株式会社 |
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住所 | 〒116-8587 東京都荒川区西日暮里 6丁目22番22号 |
電話番号 | 03-3894-4771(大代表) |
URL | http://cleanup.jp/ |