会社概要
会社名 | 株式会社ワイピーシステム |
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住所 | 〒189-0003 東京都東村山市久米川町5-33-4 |
電話 | 042-391-3634 (代) |
FAX | 042-395-8166 |
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不意に起こる自動車事故に対応するべく
テレビで自動車レースを見ていると、
稀にではあるがマシンのトラブルにより火の手が立つことがある。
そんなとき、テレビの向こう側では車の中に閉じ込められたドライバーを助けようと駆けつけたレスキューが、
消火器を使って懸命に消火活動を行うと同時に、ドライバーを運転席から引きずり出す救助作業をしている姿を見ることができる。
この高価なマシンとドライバーに消火剤として使用されているのが二酸化炭素消火器である。
車というのは燃料を爆発させながら走っている乗り物であるので、当然であるが事故の際には火災の危険がある。
自動車事故はテレビの向こう側だけのものではない。
普段自動車を運転している人であればこのような事故はいつ起こっても不思議ではないのだ。
では、そんな不意の自動車事故に遭遇したときに私たちはどう対応すればいいのだろう。
(株)ワイピーシステムでは、自動車内に搭載できる
小型の二酸化炭素消火具「消防RESCUE」を開発・販売している。
この商品の特筆すべき点は「消す、切る、割る」といった3つの動作を1つの製品でカバーしていることだ 。
出発点はメッキ工場
同社はこの消化具だけをつくっているメーカーではない。
元々の業務は下請け仕事としてめっき業務を引き受けている町工場であったし、現在も同業務は継続している。
ただ、同社代表である吉田氏に話しを伺っていくと、
これまで同社の歩んできた道、そして開発・販売してきた製品がいかに戦略的に世に出されたモノであり、
また、
多くの中小企業が望む「下請け業務からの脱出」を実現してきた製品であるかがわかる。
氏は、社長に就任してから10年余り経ったころ、
めっきの技術を極めようと社長業の傍ら東京農工大学大学院にドクターとして入学する。
そして、研究の末に世をあっと言わせる技術を成功させる。
「私が大学院に入学した理由は、
めっきを行う際に必ず出る廃液を無くしたかったからなのですが、
第4の物質状態といわれる“超臨界流体”の中でめっき処理を行うことで、
廃液を出さないめっき法を開発できたのです」
同技術の成功が世界初の偉業であったということで、氏はワイピーシステムの社長としてではなく、一学者として世間からの注目を浴びるようになっていく。
経営者としてのステージを上げる
「大学院に入って何が一番変わったかって、
アカデミックな機関の人たちや私の研究に開発費を出してくれる行政の人たちとの太いパイプが出来たことですよ」
氏は世界初の技術を成功させることにより、「人脈」というビジネスにおいて最も重要な要素をドクター時代に築き上げっていったのである。
大学院内には同社の研究部が置かれ、国からは数億円単位で研究補助費がついたという。
そして、そんな環境下から自社オリジナル製品は生まれていくのである。
「最初に開発したのは二酸化炭素を使って洗浄を行う装置でした。
自動車部品メーカーさんが多く購入してくれたのですが、その中の1社さんである日火災が行ったのです。
その場に居合わせた人が偶然にも同社の洗浄機で火を消すと、あっという間に火の手が収まったというのです」
その後、氏はこの事件をきっかけに現在大ヒット商品となっている「消防RESCUE」の前進である「消棒」の開発に着手する。だが、同社が他の中小企業からメーカーへの脱却を図る企業と絶対的に違ったのは、その開発段階において自らを「スーパーマン」と称する氏のアイデアマンとしての存在があったからに他ならない。
経営者とはこうあれ
「経営者の仕事というのは儲かる仕組みをつくることに尽きます。
厳しい言い方かもしれませんが、よく弊社と同じような規模の町工場の社長さんが
『うちの会社は技術だけでは絶対に負けない』 とおっしゃいます。
お気持ちはよくわかりますが、下請業態である限り景気に左右され、
いずれは淘汰されるのは明白。では、どうすればいいのでしょう」
現在同社では新製品を開発する際に協力する企業、特許の問題、販売方法といったその製品が作り手側からエンドユーザーに渡るまでのありとあらゆる場面をシュミレーションし、その結果確実に“売れる”と判断された製品のみが世に出ていくという。
「私は石橋を叩いて壊すタイプですから(苦笑)」
と氏は言うが、冗談ではなく本気なのである。
そして
「中小企業が大資本の大手企業に対抗するには知恵で勝つしかありませんからね」と、自らの徹底した事前調査こそが、同社がこれまで成功を勝ち取ってきた秘訣であると話してくれた。だが、氏と同じことをするのは、言うは簡単であるがそう誰でも出来ることではない。
売れる仕組みを考えることこそが私の“こだわり”
「僕の頭の中のスケール感は宇宙より広いと思っていますから」
対談中、言葉をしっかりと選び、視線を筆者からほとんどそらさずに取材に応じてくれた氏は、
従業員数20名の町工場のオヤジというイメージは全くない。経営に関するノウハウ本を執筆している大企業のやり手経営者というイメージがあり、まさにスケール感は宇宙規模そのものだ。
『こだわり物語』の取材を通じて確かにいいモノ、こだわりを持った製品をつくっている中小企業経営者にはよく会う。
が、氏のように知財の調査から販路の選択・決定といった“商”の部分までもをしっかりとトータルでスキームしている経営者はそうはいない。
そのしっかりとしたスキームの結果世に出て来た製品だからこそ「消防RESCUE」はこれまでの大ヒット商品となり得たのだ。
参考までにそのスキームの1つを挙げると「消防RESCUE」は開発段階から大手自動車メーカーであるホンダと共同で開発しており、販売直後からホンダの純正品として発売されている。
「自社のオリジナル製品を開発したい」と望んでいる中小企業経営者はごまんといるだろう。
そのような経営者は「いいモノをつくる」という前に「売れるモノをつくる」という考えにシフトをするということが、
今後必要だと今回の取材を通じて感じた。
結果として売れた商品こそがいいモノとして世に認められるのだから。そのような考え方も立派な“こだわり”なのである。