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木くずから作られた木粘土「もくねんさん」

〜鉛筆を製造する過程で生じるおがくずをリサイクルする〜 北星鉛筆株式会社

えんぴつという筆記具は永遠だ

子どもが字を覚えていく際、大人が使うシャープペンシルやボールペンといった筆記具ではなく、 えんぴつを使う子どもが圧倒的だろう。

その理由は、木の持つぬくもり であったり、えんぴつで字を書く際の筆圧が関係しているはず。

だが、大人になるにつれてえんぴつ離れが進み、気付けば自分の筆記用具にえんぴつがなくなっている人も多い。

しかし製図やアートの世界では未だえんぴつは重宝され、その人気は根強い。
だが、えんぴつはその製造過程で約40%もの木くずを生じる という。エコが叫ばれる現代において、大きな問題だ。

「もくねんさん」とは

「もくねんさん」とは、もく(木)ねん(粘)さん(敬称)の略であり、 木を主成分とする粘土風の商品という意味だ。
つまり正しくは粘土ではなく、これまでにない新しいタイプの商品である。
もちろん主成分の多くは木であり、含有率は95%もあるという。 残りの5%は、粘土のような風合いを出すための糊(のり)だそう。

ただ、正確には製造に使用されているのは木というよりは、おがくずだという。
そして、このおがくずはえんぴつを製造する際にどうしても生じる、削りカスをリサイクルした素材だと、

1パック300円で販売されているこのもくねんさん。
価格的には一般の粘土と変わらないがいくつかの特長がある。

まず、完全リサイクル商品であるということ。 仮にゴミとして廃棄される場合でも、焼却もしくは微生物分解によりいずれ土に帰るというのだ。

参考までに説明すると、一般の粘土は主成分が土であり、焼却すると焼き物になってしまい、扱いは産業廃棄物となる。

もくねんさんは乾燥すれば
木と同じように、切る削る接着
といった加工が可能であり、当然軽い。

つまり、基本的に木でできたオブジェだと思えばいいのだ。
もちろん色を塗ることも可能。漆を塗る人もいるんだとか。

ただ、もくねんさんから作った作品の見た目は、
木というよりは素焼きというイメージを持つ。
この辺りが、子どもからだけでなく大人のホビーとしても
人気・注目されている理由でもあろう。

一家で鉛筆を作り続けて60年

同社の歴史は60年と古い。

現社長の祖父である杉谷安左衛門氏が、
北海道から出てきて創業してから、
一貫してえんぴつを作り続けてきた老舗企業だ。

取材に対応してくれた龍一氏も、
現社長和俊氏のご子息だという。
葛飾区という下町に根ざした町工場だが、その規模も志もでかい。

従業員数は約30名。
工場と事務所、そしてミュージアムのある敷地には4階建ての大きなビルが建ち、
外壁をえんぴつのイラストで彩っているから、まるでえんぴつ御殿のような印象を持つ。

「この会社を経営する人たちは、心からえんぴつを愛しているんだろうな......」

取材に向かう道のりで、筆者が感じた思いは、そのままずばりであった。

「もくねんさんを開発した理由は、
 製造工程でどうしても生じるおがくずをリサイクルすることが目的ですが、
 それ以上に日本の伝統技術であり文化でもある えんぴつという商品を、後世にしっかりと残したいからなんです」(杉谷龍一氏)

2010年3月20日オープンした「東京ペンシルラボ」は、
そんな一族の想いが詰まったミュージアムだ。
えんぴつの歴史と製造方法が一目で分かるような資料を豊富に展示したコーナーの他、
もくねんさんを使って実際に作品を作ることができるワークスペースを設置した。
さらに、できた作品を飾る美術館も併設している。

「いずれはこの場所を、子どもたちが社会化見学や修学旅行で訪れるような名所にしたいんです。
 そして、えんぴつをもっと身近に感じ、これからも愛し続けててほしいんですよ」(龍一氏)

「もくねんさん」をきっかけに地場産業を盛り上げる

「もくねんさん」のこだわりは、
上述したえんぴつ産業における、
リサイクル型のシステムを目指したことも大事だが、
それ以上にえんぴつという誰でも身近に感じる商品を介して、
地場産業に活気を与え、葛飾区を盛り上げることが根幹にあると感じた。

これは想像だが、杉谷家が集う団らんの席では、
きっとえんぴつに関する新しいアイデアが次々と飛び交っているように感じるのだ。

そしてそのアイデアや想いが1つの大きな形となったのが東京ペンシルラボ――。

もくねんさんに着色するための
特製絵の具「ウッドペイント」が生まれたのも、
家族の絶え間ないアイデアからだろう。

そして今、
もくねんさんはただオブジェを作るだけでなく、
キャンバスに立体的な絵を描くことのできる新素材として歩み出し、
「木彩画」なるアートの新ジャンルを確立した。

日本全国の教育機関でもくねさんが使用されることを望む

子どもというのは、
ほんとうに何かものを作るという行為が大好きだ。
そしてエコロジーにも敏感。
きっと、人間としての本能なのだろう。

「この粘土は、
 あなたたちが普段使っている
 えんぴつの削りカスからできたものですよ......」

図工の時間、
先生が生徒たちにこう言える環境が1日も早く来ることを熱望する。

会社概要

会社名 北星鉛筆株式会社
所在地 〒124-0011
東京都葛飾区四つ木1-23-11
電話番号 TEL :03-3693-0777
FAX :03-3697-5827

北星鉛筆株式会社 のHPはこちらから

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