会社概要
会社名 | 小江戸鏡山酒造株式会社 |
所在地 | 〒350-0065 埼玉県川越市仲町10-13 |
電話番号 | TEL :049-224-7780 |
ホーム > こだわりの企業をみる
江戸時代には城下町として栄え、その面影が残る黒色を基調とした町並みは、 関東でも有数の観光都市としてその名が知れ渡っている町、川越。 2009年の春にはNHK連続ドラマ『つばさ』の舞台にもなった。
川越市をかかえる埼玉県は、河川面積の割合が全国一位。清い地下水や湧き水が豊富にある地域だ。
そんな自然からの恩恵を受け、町の発展とともに地酒文化が発展してきた側面を持つ。
今回取材に伺った小江戸鏡山酒造(株)は、
川越市民が愛し続けている地酒『鏡山』を造る酒蔵であるが、設立は2007年と新しい。
その背景を取材すると、そこには地元を愛する若者たちの熱い思いがあった。
酒造メーカーというと一般的には代々続いており、「老舗」というイメージを持つ人が多いだろう。
同社の設立は確かに若いが、
その実は歴史ある地酒を復活させたいという思いから設立した会社であり、同社が造る酒「鏡山」自体の歴史は古い。
「鏡山」という日本酒が世に生まれたのは今から100年以上も前のこと。
造っていた酒蔵は鏡山酒造(株)といい、設立は1875年(明治8年)。
以来、長く愛されてきたが訳あって2000年にその幕を閉じた。
だが、地元で生まれ育ちその味と歴史を知っている若者たちが
「俺たちの手で『鏡山』を復活させよう!」
と立ち上がったというのである。そんな若者たちの思いに応えたのが、
今の酒蔵が建つ同じ敷地内に拠を構える松本醤油店だ。
同店は「はつかり醤油」という名の醤油を製造・販売しており、その歴史は鏡山をはるかに上回る。
銘酒を復活させたいと新しい酒蔵の建設場所を探していた若者たちに
「同じ醸造仲間じゃないか」
と松本醤油店の代表が声をかけ、全国でも珍しい平成生まれの酒蔵は誕生したのである。
だが、鏡山を復活させた若者たちはなにも旧来の酒をただ復活させたわけではない。そこには若者ならではのこだわりがあった。
酒を造る職人さんのことを蔵人(くらびと)と呼ぶそうで、
今、業界ではその高齢化が問題となっているという。
同酒蔵では会社を興す際に若い蔵人を選出。
平均年齢28歳、4名の蔵人が作業にあたる体制を整えた。
蔵人を束ねる杜氏(とうじ)には、
地元出身であり茨城県の酒蔵で働いていた人物を抜擢。
31歳と若いが経験は豊富だ。
これ以上ない人選で銘酒復活事業はスタートしたのである。
少数の蔵人で酒造りを行うため、その生産量は限られる。
だが、大量に造り利益を上げたいという気持ちはそもそもないという。
蔵人たちの頭のなかにあるのは「ただうまい酒を造りたい」という職人魂なのだ。
そのことは、彼らの仕事ぶりからもわかる。
酒造りはオンシーズンである10〜3月になると、休みなしで毎日24時間体制での酒管理を行う必要があり、
蔵人は交代で蔵に泊まり込むんだとか。
「好きでないとこの仕事はできない」という言葉をよく聞くが、まさにそれを地でいっている職業が蔵人なのである。
近年はどんなに大きく有名な酒蔵でも、高級酒を除いては機械作業を増やし、蔵人の作業量を減らす傾向にあるそう。
そうすることで、蔵人の労力・コストが減り、結果として酒の価格が安くなるからだ。
だが、大吟醸に代表される高級酒では、どうしても蔵人の手による作業が必要だという。
それは、蔵人が手作業で仕事を行うことによって、「うまい酒」ができるからに他ならない。
「私どもの酒蔵で造っている酒は、
酒のランクを問わず、すべて丹精込めて同じ製法で造っております」
日本一小さな酒蔵ともいわれている同社では、できる限り機械を使った作業は行わず、
手作業へのこだわりをみせる。そこには5つの約束があった。
先ほども説明したが、一般的な酒蔵では純米酒といった手ごろな酒は、 言い方は悪いができるだけコストを落とした方法で製造する酒蔵が多いそうだ。つまり、 機械作業を増やしたり、一回の製造量を増やす(大きなタンクを使用)ということ。 同社ではそのような利益第一主義の営業スタイルは一切とらない。
その最たる作業が「1」だ。
小さなタンクで造ることにより、製造過程における酒の管理が徹底できるのがその理由だそう。
その他の約束も意味するところは同じ。
重複するが 「とにかくおいしいお酒を川越市民に飲んでもらいたい――」 との思いからこの約束は生まれたのである。
作業の詳しい内容については紙面の事情により割愛するが、同社WEBサイトを見れば、 そのこだわりをより知ることができる。
以前の酒蔵は、
現在の場所から500mほどの場所にあり、
今はその息が絶えてしまった旧酒蔵のことを、
小江戸鏡山酒造の人たちは親しみを込めて
「エピソード1」 と呼んでいるそうだ。
――第2幕は開け、順調な滑り出しで銘酒復活事業はスタートした。
だが、その勢いはエピソード1が、
明治の創業から平成の世まで築き上げてきた100年以上に渡る歴史の贈り物であることを忘れてはならない。
「鏡山」が復活した今、彼らがこれからとる行動はその新しい歴史のページを刻んでいくことである。
それは、今まで通り実直に酒を造り続けることに他ならない。彼らの活躍に期待すると共に、今後の動向に注目したい。